小渕、高市、萩生田3氏への寄付問題を御用NHKが調査した背景を憶測する
2023年9月24日
少し前置きが長くなるが、大メディア報道の問題点について述べておきたい。
福井地検管内の小浜区検の検察事務官が、道交法違反など計10人の事件処理に権限なく関わったとして、22日、最高裁は公訴棄却判決を下し、裁判手続きをとりあえず打ち切るという事件があった。
だが、これは単なる内部の手続き上のミスで、しかも、わが国の公訴棄却判決には一事不再理効は及ばないので、
後の二度手間を省くという意味でも、検察は隠せるものなら隠し通したかったのではなかったかとも思われるが、
検事総長が最高裁に非常上告を申し立てたことで、公の知るところとなった。
件の事務官が正義感から公表を望んだやむなき措置だったのか、証拠偽造などの大規模な不正発覚をもみ消すための工作なのか、知る由もないが、
いずれにせよ、このレベルのミスを当局が認めるのはまれである。
だが、ここで強調したいのは、公表に至った真相ではなく、刑訴法454条の「非常上告」という制度である。
非常上告とは、検事総長が最高裁に対して、刑事訴訟における確定判決について、
その事件の審判が法令に違反したことを理由としてその違法の是正を求める申立てのことだが、
以前、私は知り合いの司法担当の記者にこの制度を知っているか聞いたところ、「もちろん知っている」と答えたので、
「では、袴田事件で、高裁は当局の証拠ねつ造を実質断定したのだから、
メディアが検事総長に非常上告を発動するよう圧力をかけてもよいのではないか」と問いかけた。
反応がなかったので、続けて、
「メディアが本来の法律用語の意味を無視して、あえて間違った使い方をして報道しているのはなぜか」と問うと、
「慣行だろう。どうせ誰も気にしていないからいいではないか」という呆れた答えが返ってきた。
検事総長にはビビって何も言えない、国民は言葉の意味などどうせわからないのだからかまわない、ということか。
言葉の意味で言えば、日本のメディアが、事件報道で本来の意味を捻じ曲げて伝えている意図は謎である。
当事者の記者でさえその理由を答えることができないというのはおかしな話である。
直近では、次のような報道があった。
「全国で相次いだ広域強盗事件を「ルフィ」などと名乗り指示したとされる男ら4人について、東京都狛江市の住宅で1月、住民の女性が暴行され死亡した事件を指示した疑いが強まったとして、
警視庁が12日に強盗殺人容疑などで再逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。一連の広域強盗事件が表面化する契機となった狛江事件で指示役の摘発は初めて。」(ここまで)
だが、再逮捕とは、一度逮捕・釈放された後に同一の犯罪事実でもう一度逮捕することなので、
一罪一逮捕勾留の原則に反し、この捜査手法は原則違法である。そもそもあたりまえのように安易に用いてよい言葉ではないはずである。
だが、末尾で「狛江事件で指示役の摘発は初めて。」とも言っているので、これは再逮捕ではなく、単に別事件の逮捕を言っているだけということがわかる。
そうであれば、これは「余罪の逮捕」というべきだが、これについても事件単位の原則により、常に合法とは限らず、安易な使い方は許されない。
違法捜査の疑いがある再逮捕という言葉を当たり前のように使い、しかも、誤った使い方をしている上に、
余罪捜査に何の疑問も示すことなく、一方当事者に過ぎない警察発表をそのまま垂れ流すというのだから、
これではメディアが率先して当局の人権侵害に加担しているようなものである。
メディアは「再逮捕」という言葉が好きなようで、直近では、
「警視庁少年育成課は11日、強制わいせつと東京都迷惑防止条例違反の疑いで、中学受験塾大手「四谷大塚」(本部・中野区)元講師の○○容疑者(住所東京都○○市○○)を再逮捕したと発表した。」
というのもあった(○○にしたのは筆者)。この報道には、別の問題もある。
メディアは、容疑者(被疑者と言うべきだが)の住所を町名まで公表しているが、これはやりすぎである。
無罪推定の原則からも大いに問題がある。
さらに、フルネームと年齢、さらに町名まで公にさらしてしまえば、一般人でも居住地の特定が可能になるので、
これでは事件と関係ない同居の家族まであらぬ面倒ごとに巻き込むことになりかねない。もし無罪だったら、これらの報道にどう責任を取るつもりなのか。
ドリルで証拠を破壊する小渕、メディアを恫喝して黙らせようとする高市、反社会団体とつるんで今もなお縁を切れないでいる萩生田は、どれも重罪に該当する。
だが、彼らは今でも議員であり続け、かつ、官邸、党の要職を務めていることをメディアは、形だけの追及をして結局許している。この報道のアンバランスは許しがたい。
この3人が、おととしの衆院選の直前に、国の公共事業を請け負っている事業者から政党支部経由で寄付を受けていたことを、あのNHKが真っ先に伝えている。
なお、3人の言い訳は次の通りである。
小渕「(問題があることを)調べる術がなかなかなかった。今回の指摘を受けて返金した」
高市「「公職選挙法違反にはあたらないが、誤解を招くことがないように返金した。」
萩生田「違法ではないが、誤解を招くことがないよう道義的観点から返金した」
我々はこのような言い訳を真に受けてはならない。
誤解が生じる可能性を始めから認識していたのなら、そもそも受け取らなければよいだけの話ではないか。
指摘を受けたからカネを返すと言うなら、指摘を受けなければ、今頃はまだ懐に現ナマが入ったままなのだろう。全くもってふざけた言い分である。
政治資金規正法も政党支部や資金管理団体への寄付が法の抜け穴になっていると数年前から指摘されているが、一向に改正される気配がない。
彼らは憲法改定を唱える前に、自身を糾すべく、まずは公職選挙法や政治資金規正法の改正を声高に叫ぶべきではないのか。
ところで、今回のこの3人の報道には、えも知れぬ違和感を覚えるのは私だけだろうか。
もやもやの理由は3点考えられる。
まず1点目。これを調査して真っ先に伝えたのが御用のNHKだという点である。
今回の報道は、岸田政権の下僕となって木原問題に沈黙しているとの批判をかわすためのNHK側の判断によるめくらましの可能性がある。
そうとなると、3人はダシに使われたということになるが、
3人が言い訳しているように、違法性がない。
で、あれば、この問題がこれ以上波及することはないという意味で、本人たちの了承を得ていなくても、御用側が安心して使えるネタだといえる。
2点目。違和感と言うよりも、報道の背景とでも言うべきか。この報道が官邸の了承を得てなされていることを前提とした上で、
来年の総裁選でライバルになるであろう3人の評判を落とすために、岸田が仕掛けた策略とも考えることができる。
総裁選のことしか頭にないような岸田なら十分ありうる話だろう。
3点目は、菅義偉ら反主流派の情報提供による揺さぶりである。
秋本議員の収賄逮捕で、官邸の策謀にはまった反主流派が、噂されている11月の解散総選挙に向けてのデモンストレーションであるとの見方も成り立ちうるだろう。
元経産官僚の古賀茂明氏が、週刊文春に木原問題を情報提供しているのは菅義偉サイドではないかとの憶測を週刊誌の連載で述べていたが、同意見である。
ここにきて党内権力闘争は熾烈を極めており、来年総裁選まで党内基盤がもたない可能性がある。
岸田が内閣支持率に関係なく、年内に解散総選挙に踏み切る可能性は十分あるだろう。
自民党HPによると、公明党との選挙協力は復活したのことである。
となると、10月中の臨時国会で発表される総合経済対策が国民に予想外にも好評を博し、なおかつ、
同月22日に行われる衆参2補選で結果を出すようなことがあれば、翌月11月の総選挙の準備は整ったとして、いよいよ、となってもおかしくはない。
時期はともかく、有権者は間違っても、前述の3人、岸田、木原、麻生、甘利、菅、二階、安倍派全員に票を投じてはならないことは今更言うまでもないだろう。
スポンサーサイト