直近のドス黒い国策「捜査」「裁判」の2点を斬る
2023年9月10日
まずはドス黒い国策捜査の方から。
8月13日付本ブログ「秋本真利議員を陥れた黒幕の存在を2点推理する」で書いた私の推理はほぼ当たっていると思われるが、若干主張の補足が必要である。
9月7日、秋本真利衆議院議員が受託収賄の容疑で逮捕されたが、これを受けて秋本は弁護士を通して
「国会質問をした謝礼として賄賂を受けたという事実はない」とのコメントを出した。
金銭授受の事実まで否定しているような言い方にも読めるが、そうではなく、これは、
「金銭授受の事実は認めるが、それが請託を受けての賄賂であるとの認識はない(構成要件的故意はない)」との主旨であることは言うまでもない。
ところで、すでに8月6日の時点で各メディアは「秋本が事前に会社社長に「馬を買いたいので金を出してほしい」などと携帯電話のショートメールで連絡し、
社長が要求に応じて現金を事務所に届けたことが関係者の証言から明らかとなった」と伝えているが、
このおしゃべりな「関係者」とは誰なのか。
そして今回、秋本逮捕の一報と同時に各メディアは、このようなことも伝えている。
「秋本真利容疑者=受託収賄容疑で逮捕=と風力発電会社の前社長が馬を購入した際、自身の名前を伏せていたことが8日、関係者への取材で分かった。」と。
たびたび出てくる「関係者」は、逮捕前の秋本の携帯メールの具体的内容を知っており、
周囲に誰もいないところでの金銭授受をした事実も知っており、馬を買う際に匿名にしていた事実も知っていたということになる。
だが、メールの内容など、当事者しか知りえないような事情を、第三者である「関係者」が把握しているとは思えない。
だが、この「関係者」が前会社社長その人だとすれば、筋が通る話である。
つまり、犯罪の共犯とも言うべき「当事者」が当局にペラペラと自供しているのである。こうなると、今後秋本が事実そのものを否定して争うのは難しいだろう。
そこで、故意の否定を争うことになるが、こちらの立証も容易ではない。
前会社社長が全面白状している背景について、私は前回、秋本と何らかのトラブルがあったのだろうと書いたが、このあたりの憶測はとりあえず今回は無視する。
仮に、前社長の供述がなくても、証拠方法は他にもあるので検察は困らない。
たとえば、会社側から青森県での事業に関して国会質問の依頼を受けていたことを示すメールも押収していることも明らかになっている。
検察が、単純収賄ではなく、立証が困難で、かつ、より罪の重い受託収賄容疑での逮捕という強気の姿勢を見せているのは、
メールも含めて、他にも確たる証拠方法をつかんでいるからだと思われる。
再エネ推進派の秋本を陥れたのは、官邸の謀略でもあると過去本ブログで書いた。
その主張の骨子は次の通りである。本音では原発推進派の官邸が、台頭する再エネ派をつぶすこと、
それがひいては、河野太郎、反主流の菅義偉らの力をそぐことになり、一石二鳥の効果がある、と。
この憶測は概ね当たっているだろうが、細かく書くと事情はもっと複雑である。
原発推進派は、エネルギー政策としての原発そのものに関心があるわけではない。原発推進派とは、正確には、原発「利権」推進派である。
利権になれば中身はどうでもよい。だから、再エネの方が利権になると思えば、こちらにあっさり乗り換えることになる。
だが、オールオアーナッシングで彼らは物事を考えない。原発同様に、再エネにも利権があることは間違いないので、
強欲な彼らは、見境もなく、本来対立するはずの政策の利権確保に躍起になる。
菅首相退陣後、自民党内に「再エネ実装議運」が発足した。発起人は岸田首相、麻生太郎らで、メンバーは60人超いる。
だが、過去本ブログで書いたように、党内にはすでに菅、河野らが中心の「再エネ普及拡大議員連盟」が存在する。秋本は言うまでもなく、こちらのメンバーである。
ここから、今回の秋本逮捕は、官邸が再エネ利権を反主流の菅から奪い、ひいては菅の政治力を貶める謀略ではないかとの憶測が可能となる。
官邸(政府)は、日本の将来にとってエネルギー政策のあるべき理想、方向性などを真剣に考えて行動しているわけではない。
ひたすら今の自分の利益追求だけを考え、ときには政争の具としても活用するということである。
検察にも、官邸の謀略にあえて乗る旨みがあった。誘導尋問問題、大樹総研の矢島逮捕の頓挫など、失墜した権威の回復を図る必要があったからである。
「検察は官邸の思惑など考えていないし、意思疎通も図っていない」というのなら、
委員会での秋本の「質問」に答弁に立った安倍5人衆の一人の萩生田を検察が追及しないことへの説明がつかない。
検察は、大臣経験のない平議員の単なる「質問」と現金授受との間に、賄賂の対価関係ありと判断した。
だが、萩生田は、秋本の「質問」の1ヵ月前に、記者会見で評価基準変更に言及していた。
そして、平国会議員の「質問」の1年も経たないうちに、評価基準が「早期導入」に重きを置く形に変更された。これは秋本ではなく、萩生田の力によるものである。
秋本は、議員として質問権を行使しただけで、一般的にも具体的にも職務権限(制度設計変更権限)があるのは萩生田なのである。
だが、萩生田逮捕となれば、岸田政権そのものが吹っ飛びかねない。だから、検察は、三下の秋本を捕まえて、とりあえずの権威回復に成功した、と。
暗黙か自明かはともかく、政権と検察によって演出された見事な国策ショーは、秋本追及で幕を閉じることになると予測する。
次に、ここから書く辺野古工事をめぐる裁判の結論はさらに国策の色合いが濃い。
9月4日、辺野古での改良工事を承認しない県に対して国が行った「是正指示」が違法かどうかが争われた裁判で、
最高裁は適法と判断。これにより、県は工事を承認する義務を負うことが決まった。
だが、この裁判の存在自体にそもそも不当性がある。
2021年12月7日、防衛省は、設計変更申請を不承認とした県の対応を不服として行政不服審査法に基づく審査請求を国交省に申し立てた。
だが、行政不服審査法は「国民の権利救済」を目的とする制度である(同法1条)。
だから、国の機関が国の機関に救済を求めるのは制度趣旨に反し、違法である。国に不服申立適格はそもそもない。
そこで、防衛省は国として申し立てるのではなく、防衛省沖縄防衛局を「私人」と見立てて訴えるという裏技を使った。
だが、そもそも国にとって問題解決に1番手っ取り早いのは、行訴法8条に基づく処分取り消しの訴えの提起のはずである。(行訴と審査請求は自由選択主義を採用している)
だが、裁判だと負ける可能性が高いと判断したのだろう。
不承認の取り消し処分の訴えについて、
最高裁は1995年3月23日、自治体(市)の不承認(同意拒否)行為は、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、
取り消し訴訟の対象となる処分には当たらないと判断している。
故に、ここでもし防衛省が行政訴訟を選択していれば、その後の県と国の一連の訴訟はなかったかもしれない。つまり、移転問題は一応の決着がついた可能性があった。
これではまずい、と。そこで、防衛省は一計を案じた。
訴訟を回避し、お仲間である国交省に申し立てるという禁じ手である。
予想通り、防衛省のお仲間である国交省は、県の不承認処分を取り消すとともに、承認を求める是正指示を出した。
この対応を不服として争ったのが今回の裁判だが、これこそ取消訴訟の対象となる処分性なしである。国と裁判所の見事なマッチポンプで県は全面敗訴した。
そもそも国交省の裁決の是非云々以前に、行政不服審査制度の根幹を揺るがしかねない身内同士の八百長裁定が問題だったはずである。
にもかかわらず、裁判所はこの点にメスを入れなかった。これでは一連の裁判が国を勝たせるためのやらせだったと言われても仕方がないだろう。
だが、ここまで書いてきてどうかと思うが、基地関連訴訟は、そもそも反対派に初めから勝ち目がない。勝率ゼロである。
基地問題は米国との共同「事業」だが、その米国と日本が締結した
「日米行政協定第17条を改正する議定書に関する合意された公式議事録 1953年9月29日」によると、
「日本国の当局は,(略)所在地のいかんを問わず合衆国の財産について,捜索,差し押さえ,または検証を行う権利を行使しない」と謳っている。
つまり、米国の許可なしに政府、裁判所も、基地という財産に勝手な判断ができないことになっているのである。
この点と先の2021年12月7日の行政不服審査法に基づく審査請求の不当性を語らずして、
ネットやテレビで今回の裁判を肯定的にウダウダ言っている者らは、自民の手先か、事の真相をまるで理解していないド素人のどちらかである。
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