政治的介入があろうがなかろうが日本のTVは権力に迎合して真実を報道しない
2023年3月19日
総務省が作成したとされる行政文書を高市早苗が「捏造だ」と述べたことに対し、立憲の小西が「内容が事実なら閣僚や国会議員を辞めるか」と問うたが、
この小西の追及を憲法学者の小林節氏が「間違っている」と日刊ゲンダイのコラムで書いているので異論を述べたい。以下、小林氏の意見を紹介する。
「国会は法廷ではないのだから、文書の内容の真贋について証明する手続きも判断を下す第三者もいない。」
「だから、そんな争いになったら、モリ・カケ・桜の場合のように、不毛な水掛け論でウヤムヤに終わることは目に見えている。」
「つまり、行政過程で作成された文書の言葉尻の真贋論争は本来の争点ではない。」
「だから、行政文書を政治家につきつけて、「本物であったら辞職するか?」などという話に持っていった野党の攻め方が間違っている。」
「問題の本質は、自由で民主的な社会を、異論も許さない専制社会のように変えつつある、安倍・菅政権以来の政治の是非である。」(抜粋終了)
最後の箇所の「本質」論は、サンデー毎日で連載中の青木理氏なども指摘していたが、高市問題で言えば、私は第一の本質ではないと考える。
「安倍・菅政権以来の政治の是非」との問題意識を否定するつもりは毛頭ない。
だが、そのような抽象論議を国会で野党が本筋でやりだしたら、それこそ不毛な水掛け論で終わってしまうだろう。
高市問題の本質は、法的にも真正推定が及ぶ行政文書について、
何の根拠も示さず「ねつ造だ」「不正確だ」と強情を張って自己保身を図るあつかましい権力者を排除することの是非であると考える。
高市は当時も今も現職の国会議員であり、大臣である。高市のような人間を権力の座から追い出すことの是非こそ問題の核心ではないだろうか。
今回の小西の追及は見事だったと思う。「ねつ造だ」との高市の言い分に対して、小西がたとえば、
「本物だったら、放送法の解釈をゆがめようとした発言があったことを認めるか」「本物だったら、当時の大臣の発言としていかがなものか」
などと、これまでのような意図不明の追及をしていたら、それこそ不毛な議論になって結局は逃げられてこの問題は終わっていただろう。
「クビをかけて本物だと言えるのか」という責め方は詭弁で逃げることを許さない有効な追及だったと評価してもよいのではないか。
それなのにこれを「間違っている」という小林氏の批判は受け入れがたい。
さらに小林氏は、国会は法廷ではなく、文書の内容の真贋について証明する手続きも判断を下す第三者もいないのだから、真贋論争に意味はない旨述べているが、
それを言ってしまったら、歴史上ありとあらゆる公文書の真贋(真正)を民主政の過程で証明する方法がないということにならないだろうか。
小林氏のように言い切ってしまうと、権力者たちは、自分たちに都合の悪い公文書が出てくる度に偽物だと言い出し、その言い分を認めてしまうことにつながる可能性がある。
歴史公文書の内容のすべてを裁判所で証明できなければ真正を担保できないとまで言い切るのは極論である。
行政文書に限って言えば、作成権限ある公務員が作成すれば、すべて内容も正しいと推定されることが法でも明文化されている。
確かに国会は法廷ではない。が、高市がその推定を覆したいのであれば、彼女の側で真実を証明しなければならないとすることが常識にかなった考え方である。
ところが、3月19日現在、彼女はそれをできていない。で、あれば、件の行政文書は正しい内容で作成されたまっとうな文書であるとの合理的推認が働くと解釈すべきである。
国会で追及しても、文書の真贋の判断を下す決定権者はいないと言うが、
最終的な審判を下すのは我々主権者であり、それは選挙権によって行使されると建前でも言っておかねばならない、言っておきたいところである。
国会での真贋論争が不毛な議論だと言い切ってはならない。
ところで、今回の高市のように、自己保身のために執拗に正式な公文書をねつ造呼ばわりするケースは前代未聞である。
それでも高市に悪びれた様子がないのは、どこか感覚がおかしくなっているということなのだろう。
安倍政権以来、国では事実を捻じ曲げてデータを改ざんしたり、不正を隠すのが当たり前のように行われ、それは現在でも続いているので、何を今さら、という気持ちが彼女のどこかにあるのだと思われる。
GDPをかさ上げするために、コロナワクチン接種後死者数を隠蔽するために、かいざんされた元データにさらに改ざんが加えられたねつ造文書が当たり前のように作られてきた(ている)のだから無理もない。
司法でもねつ造、偽造が大流行している。
静岡県で一家4人が殺害された事件(被告人の名前を取って、袴田事件とネーミングされ、今日に至る)で、
3月13日、東京高裁は有罪の根拠とされた証拠について「捜査機関が隠した可能性が極めて高い」とねつ造”の疑いに言及した。
本ブログがこれまで再三に渡り、死刑反対を唱えている理由がここにある。権力側というのは、大なり小なりこのようなこと(捏造)を普通にやっているということである。
だが、検察は高裁の決定を不服として、20日の期限ギリギリで特別抗告してくるだろう。
検察は「新たに発見された証拠はない」として判例違反を提示するものと思われる。
有罪の決め手となる証拠を自分たちでねつ造しておきながら、である。
高市問題に話を戻したい。メディアへの政治的圧力が近年叫ばれているが、
高市の言っていたこと、やろうとしていた政治的介入なるものも、件の行政文書を読む限り、本音を言えば、テレビ側の言論の自由が危険にさらされたとまでは思えなかった。
そもそもの話、大臣が政治的圧力を加えたり、放送免許の取り消しをちらつかせて恫喝などしなくても、日本のテレビメディアは、元から基本的に権力寄りの報道スタンスをとっているからである。
確かに、政治的圧力がなければ、権力批判の報道は増えるだろうし、古賀茂明氏らが排除されるようなことも起こらなくなるだろう。
だが、忖度なのかどうかはともかく、従来から今日に至るまでテレビメディアは、権力側にとって、本当に都合の悪いことは伝えないし、言うこともない。
直近の報道で確認すると、たとえば、沖縄県の石垣島では初となる陸上自衛隊の駐屯地が開設されたという3月16日の報道はというと、
各テレビメディアの論調はすべて以下のようなものだった。
「軍事力を強化する中国が海洋進出を強め、近年では日本周辺でロシアとの軍事的な連携を強めるなど、日本を取りまく安全保障環境は厳しさを増している」と。
「浜田靖一防衛大臣は「抑止力・対処力を高めることで我が国への攻撃の可能性を低下させるものであり、我が国・国民の安全に繋がるものである」旨述べている」と。
国の主張が正当であることを前提に、ご丁寧にも配備の理由を補強して国を擁護する報道が各社横並びで行われているのが現状である。
だが、色を付けずに客観報道するのなら次のようになるべきではないのか。
「石垣島に駐屯地が開設される」「ミサイルが配備される」「その意図について防衛大臣はこう述べている」と。
報道機関がごちゃごちゃと尾ひれをつけて、国のやろうとしていることにお墨付きを与える注釈を加える必要はどこにもない。
どうしても色を付けて報道したいのなら、むしろ次の真実を付言すべきである。
そもそも南西諸島への軍備配置は、日本の防衛のためでなく、米国の対中戦略(台湾有事)に基づいて進められていることである。
その根拠は、米海軍協会が発行している機関紙の2012年4月号に掲載された論文にある。
同年8月、日本の海上自衛隊幹部学校「海幹校戦略研究」増刊の翻訳論集に翻訳版が掲載されたが、その内容は衝撃的である。
ジャーナリストの布施祐仁氏が著書「日米同盟最後のリスク」でわかりやすく解説しており、以下の説明は同書によるところが大きいことをあらかじめ断っておきたい。
論文は、中国の軍艦や航空機を東シナ海に封じ込め、中国軍が太平洋側から台湾を攻撃することを防ぐために、
米国の命令で日本の南西諸島にミサイル基地や戦力が置かれることを強調している。
ちなみに、この論文では、米国による尖閣諸島防衛は一言も触れられていない。
南西諸島は日本が戦力を配置すれば、中国は当然そこを狙ってくるが、それが米国の真の意図なのだという。
つまり、米国の計画は、日本が中国のミサイル攻撃を受けることを前提に、その間米国は一部の部隊を残して、空軍や海軍の主力部隊をいったんグアムやハワイなどに引き上げさせ、
米国本土やアラスカの主力部隊が到着するまでの時間稼ぎに日本を捨て石にする、というものである。
2019年10月3日「琉球新報」が、米国の中距離ミサイルの日本への配備計画をスクープした。
これは日本にとって極めて危険な戦略である。
ロシアによるウクライナ侵攻の理由の一つに、NATOの東方拡大があった。米国が拡大地域に中距離ミサイルを置く可能性があり、そのことへの懸念がロシアにあったことが侵攻の理由でもあった。
つまり、日本が南西諸島に戦力を拡大配備すれば、中国の懸念は必至となり、対立は避けられなくなるだろう。(驚いたことに、同紙によると、米政府はウクライナ侵攻前にそのことをロシアには伝えていたという)
中国とロシアが核弾頭を搭載した短・中距離ミサイルを日本に向けてくることに躊躇しなくなるのは言うまでもない。
このような懸念こそテレビメディアは注釈付きで一言加えるべきだが、忖度しているのか、脅しが怖いのか何も言わない。
テレビが権力側にとって都合のよいプロパガンダ装置であるのは、高市や磯崎らの恫喝があってもなくても実はたいして変わらない。
直近の内閣支持率の謎の上昇がその証左である。(3月13日NHK世論調査が先月より5パーセントアップの41パーセント、18,19日毎日新聞調査が先月より7パーセントアップの33パーセント)
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