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謎の気球型飛行物体の問題は憶測不可能なほど奥が深い 

2023年2月19日



まず、2月12日付本ブログ「ルフィ極悪犯罪事件の顛末は暗黒日本の象徴そのものである 」の主張を若干補足したい。

一連の犯罪の中でも特に問題となるのが、東京狛江の強殺の法的評価である。

フィリピンにいた渡辺ら4人の幹部のうち、この強殺を実行犯に指図したのは誰だったのか。

起訴状に「被告人4人のうちのいずれかがが指示した」(これを択一的認定という)との記載を裁判所は認めない。

だが、幸いなことに判例は、ゆるい要件で共謀共同教唆を認めている。

だから、たとえ4人の共謀事実が曖昧でも「一連の事件の全体的な考察」なる構成で4人を強殺の罪に問うことに、実務上全く支障はないといえる。

すなわち、彼らが揃って供述を黙秘しようとも、スマホの情報が削除されていようとも(具体的な証拠が希薄でも)罪を問うのにあまり問題はない。

一連の裁判は、色々と注目すべき点が多い。たとえば、日本からフィリピンに現金を運んでいたとされる女の罪である。

検察は幇助罪ではなく、強盗の共同正犯として、忠実な運び屋とされる元キャバ嬢にお灸を据えるのか、

暴力団がらみの裁判となれば、裁判員裁判にならないのではないか(被告人側にはそもそも選択権がない)、そうなると裁判は意外に長期化するのではないか、などなど、色々と興味深い論点がある。

安倍銃撃の山上裁判の行方と併せて、今後も注視していきたいと思う。

ここから今回のテーマに入る。

日本の領空内を飛んでいた「気球型の飛行物体」について、防衛省は「中国が飛行させた無人偵察用気球だと強く推定される」と発表した。

これについて、元自衛隊員の佐藤正久自民党議員が「これまでなぜ対応しなかったのか」とツイートし、

小野寺元防衛相は「今まで、中国のものということを把握できていなかったのか。」と述べ、

当時防衛相だった河野太郎は「気球に聞いてくれ」と発見時にコメントしていたが、

彼らは別にとぼけているわけではなく、政権政党に所属する国会議員や担当閣僚でさえ、情けないことに自国の領空内でおこった異変を説明できない(できなかった)というにすぎない。

これまで日本領空内で確認されている気球飛行物体は

防衛省によると、2019年11月に鹿児島県薩摩川内市、2020年6月に仙台市、2021年9月に青森県八戸市などである。

私は東京在住だが、故郷が青森県八戸市なので、当時の気球問題は、ニュースで知ってしばらく気にはなっていた。

気球の正体について、当時私は地元の知人に対し、「おそらく米軍が飛ばしているのだろう」「ロシアの可能性もゼロではないが、可能性は低い」という意見のメールを送っていた。

私は理由なく憶測で意見を述べるようなことはしない。

米軍のものであるという根拠は日米地位協定と国連軍地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律第3項(1952年7月15日施行)である。

これによると、米軍は,日本全国の上空どこでも飛んでよいことになっている。だから、たとえ日本の領空内の出来事でも、日本政府が全事情を把握する術が法的にないのである。

河野太郎も当時気球が米軍のものだという認識だったのだろう。「気球に聞いてくれ」というのは、ふざけた言い方ではあるが、

「米軍のものなら俺が知るか」との主旨で述べたと解釈すれば、言っていることはその通りである。

河野だけでなく、政府も物体の正体を確認することなく、現在に至るまで放置していた、というのが真相だろう。

偵察気球がロシア製である可能性もあると私が示唆した根拠は以下の通りである。

八戸市に隣接している三沢市には、在日米軍の主要基地がある。

米国の公文書によると、沖縄の嘉手納基地の隣に位置する弾薬庫には1300発の核兵器があり,

そこから飛行機で積み上げて,三沢などの米軍基地に運んで,冷戦中はソ連や中国を核攻撃できるようにしていたとのことである。

なお、三沢基地は,冷戦中ほとんどその訓練しかやっていなかったらしい。

また、三沢基地には、米国の軍事目的の通信傍受システム「エシュロン」が配置されていたことでも知られている。

世界中の電話、データ通信が傍受可能な三沢基地のシステムは、元NSA職員のスノーデンの暴露やEUの指摘で現在廃止されたといわれているが、真相は不明である。

それゆえに、ロシアが、地理的に離れていないポジションにそのようなスパイ施設が今もなお現存しているだろうと警戒するのは不自然ではないだろう。

偵察気球の一つでも飛ばして、上から様子を見てやるか、と考えていてもおかしくない。

だからといって、三沢市上空の真上に留めておくのでは警戒されてしまう、だから、お隣の八戸市上空から余所見程度に観察してやろう、というノリで飛ばした、と。これが当時私の推測の一つだった。

だが、気球の犯人は米国でもロシアでもなく、実は中国だったというのはまったく予測の範囲外だった。日本政府も同様の認識だろうと思われる。

ただ、この件で中国を一方的に非難するのは現時点では止めるべきである。

日本の大メディアは、例によって米国ら西側のメディアの情報を元に、米国は正義イコール中国は悪との構図で中国を一方的に批判しているが、

事態を冷静に観察すると、そうとも言い切れない。

米国は、領空侵犯(国際法違反)を理由に、これまで何機かの偵察気球を撃墜しているが、本当に領空侵犯はあったのか。

国際法上、領空の上限は定められていない。

一般的に領空の上限と考えられているのは、4万5000フィート(約13,7キロ)である。この数字は、民間機や軍用機が飛行できる高度の上限とされている。

ところが、米国で撃墜された気球は高度6万フィート(約18キロ)以上で飛んでいるので、一般的な解釈で言えば、国際法違反とも言い切れないのである。

日本で発見された気球についても、綿密な調査結果を踏まえた上で、さまざまな意見を述べるべきではないのか。

他方で、仮に中国が「気球は人工衛星の一種だ」などと弁解していたら、どうなっていたか。

人工衛星なら宇宙法の適用になるので、上空の上限はないことになる。そうなれば、中国の言い分が法的に通る可能性もなくはない。

今のところ、中国はそのような詭弁を弄していないので、この点を考える必要はないが、

いずれにせよ、法的な解釈に触れることなく、何の考察も試みずに感情論だけで中国を批判すべき段階ではないといえる。

それはともかくとしても、この問題は出発点からして謎に包まれている。

日本上空の問題で言えば、日本の領空を支配している在日米軍が謎の気球に気付かなかったというのはおかしいではないか。

高度な情報処理技術の設備を備えているはずの三沢基地が、一般人でも地上から肉眼で見える巨大な謎の飛行物体を過失で見逃すなどありえない。

故意に見逃したとなれば、なぜなのか、そして見逃した気球はどこへ消えたのか、そもそも後を追わなかったか、現時点でこれらの謎に回答するのは憶測ですら難しい。

今後もさまざまな角度からこの謎を追って検証していきたいと思う。

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