ルフィ極悪犯罪事件の顛末は暗黒日本の象徴そのものである
2023年2月12日
先週の本ブログを2箇所訂正したい。
1箇所目。一連のルフィ凶悪事件について、2月5日付本ブログでは「強盗事件20件超関与、被害総額およそ35億円」と書いたが、
10日の各メディアの報道によると、正しくは「特殊詐欺約2300件、被害総額60億円超、強盗50件超に関与」している疑いがあるとのことである。
2箇所目。発売中の文春2月16日号によると、ルフィを名乗っていたのは、渡辺ではなく今村で、渡辺はKIMを名乗っていたとのことである。
ところで、フィリピンから強制送還された渡辺ら幹部4人の容疑は、現時点では詐欺のみだが、
おそらく3月上旬あたりに、警視庁は強盗事件でも4人全員を逮捕することになるものと思われる。
この強盗事件の捜査については、「捜査関係者」と称する幾多の識者の意見に異論があるので、その点をまず述べたい。
警察庁の露木長官は9日の記者会見で、「(強制送還された)4人を逮捕してスマートフォンなどの証拠品を押収したのは捜査上大きな前進だ。」と述べた。
この長官発言を受けての見立てなのか、以下のような見解を示す専門家らがいる。
「4人の幹部は、本名ではなく通称名で指示を出す一方、匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」を使っていたので、
狛江の強殺事件を4人のうちの誰が指示していたのかを特定できない、と。
だから、スマホの解析がうまくいかない場合、彼らが供述しない限り、強殺での立件は難しいのではないか」と。
もっともらしい意見だが、文春によると、狛江の強殺を主導したテレグラムのアカウントは、渡辺の通称「KIM」であることが判明している。
仮に、この点が不正確だったとしても、4人の幹部のいずれかのスマホから発信されたものであることは各メディアも確たる事実として伝えている。
そうであれば、スマホの解析から得られる情報がたとえ不十分だとしても、(言い換えると、狛江の強殺事件を4人のうちの誰が指示していたのかまで特定できなくとも)
4人をまとめて強殺で立件するのは可能であると思われる。
「4人のうちの誰が指示していたのかまで特定できない」場合に立件に支障が出るのは、指示した者を教唆犯罪で問う場合である。
ところが、本件は共謀共同「正犯」で立件できる事案である。幹部4人は、実行犯らに本人確認書類を写メで送信させ、彼らの素性を押さえた上で指示を出していた。
実行犯らは、「もし裏切れば、自分らと自分らの家族に危害が加えられるだろう」との恐怖心から犯罪行為に突き進んでいたのである。すなわち、幹部4人と実行犯らは支配従属の関係にあった。
以上のような両者の関係を前提にすると、判例は、共謀の射程が及ぶ範囲(実行行為が共謀に基づいて行われた範囲)を拡張解釈する傾向があるので、
本件で4人を強殺の共謀「共同正犯」の罪に問うことには何の問題もないことになる。
彼らのいずれかの指示によって強殺の結果が生じたことが明らかになってさえすれば、
具体的に誰の指示によって結果が発生したのかがはっきりしていなくても、全員が強殺の結果について「正犯」としての責任が問われることになるだろう。
日刊ゲンダイのインタビューに応じたITジャーナリストの三上洋氏は、テレグラムは、電話番号と紐づいているので、どのSIMカードを使用したか特定できる、
すなわち、かかってきた電話番号は確認できるが、それが4人のうちの誰なのかまでは特定できないので、最後は4人の(取調べでの)供述によるしかないのでは、
との見解を示しているが、4人を強殺に処するには、「指示の特定」の証明は不可欠ではないということである。
ただ、特定ができない場合(情報がすでに消去されている場合)は、暴力団の関与を裏付ける事実が闇に葬られる可能性が高いというだけである。
だが、渡辺ら幹部が事実をありのままに供述すれば話は急展開するだろう。
本ブログがこの事件に注目している理由はここにある。
幹部4人のうちの1人は、六代目山口組の三次団体である福島連合のメンバーとの情報もある。
福島連合は、歌手のASKAに覚せい剤を売っていたことでその名が知られるようになった団体だが、
最近では、コロナ対策の持続化給付金詐欺事件でもちょくちょく耳にする犯罪集団である。
仮に、幹部4人のうちの1人が、一連の広域凶悪事件に暴力団関与の事実を供述するようなことがあれば、暴力団全体が壊滅の危機に晒されることになる。
2021年8月24日、特定危険指定暴力団「工藤会」トップの野村に死刑、ナンバー2の田上に無期懲役の判決が下された。
1998年に起きた元漁業組合長の射殺や歯科医師刺傷など、4つの凶悪事件に野村らが関与しているとして、延々7年間裁判が行われたが、
その間検察は、彼らが犯罪の関与を疑わせる証拠を何も提示しなかった。
理論上、教唆、共謀共同正犯はもちろん、暴対法31条の2の使用者責任の成立さえ疑わしい事件だったが、それでも、地裁はトップの野村に極刑判決を言い渡した。
今年9月に控訴審が開かれるが、一審判決が維持される可能性が極めて高いと予測する。暴力団関係者には重い罪を科す、これが今の日本の刑事実務の現状だからである。
余談だが、死刑判決を言い渡した裁判長に対し、野村が椅子から立ち上がって「アンタ、生涯このことを後悔するぞ!」と威嚇していたが、
米国なら、たとえ控訴審で無罪判決を勝ち取っても、この威嚇行為だけで短くても10年の懲役が科されることになるだろう。
話を戻す。今回の渡辺らが起こした2300件の詐欺、50件以上の強盗事件の背後に暴力団が関わっていたことが立証されるとどうなるか、暴力団の終焉は火を見るよりも明らかである。
だが、死刑、無期求刑の可能性もある渡辺らが暴力団の関与を供述する可能性は低い。
結局、指示役の渡辺ら4人とその末端の実行犯らが罪を負い、真の黒幕は温存されたままで、一連の広域凶悪事件が幕を閉じる可能性の方が高いと考えざるを得ない。
だが、この結末も今の日本社会の縮図であると言われればばそれまでである。
たとえば、五輪談合事件で逮捕されているのは実行部隊の下っ端ばかり。検察が本丸の黒幕を捕まえることはないし、
文科省元事務次官の前川喜平氏が、森友問題で文書改ざんを指示した黒幕は菅義偉であるとの認識を示しても、その菅に司直の手が及ぶことはない。
それどころか、最近は反主流派の親分格として健在ぶりをアピールしている。
河井夫妻事件の黒幕は安倍晋三だが、1億5千万円の投下にゴーサインを出した当時幹事長の二階俊博の罪も重い。
安倍は死んだが、だからといって彼の罪が法的に消えたわけではない。だが、今では誰も彼の責任を問う者はいない。二階の責任も然り。
今の二階は、息子のためにいかに世耕弘成を叩き落すかということしか頭にないだろうが、
禅譲を考える暇があったら、これまでの悪業を反省してフェードアウドしていくことを先に考えるべきだろう。次期衆院選出馬などとんでもない話である。
物価高で庶民の苦しみも何のその、金融市場を混乱に陥れた黒幕の黒田日銀総裁は、退職金7600万円を手にしてさっさとトンズラしてしまった。
黒田は総裁就任前にフィリピンに在住経験があり、彼の妻は現地でも有名で、オークションで絵画を何枚も買っていたという。
良くも悪くも「黒幕」のやること、考えることは同じだということである。
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