ルフィ連続凶悪犯罪事件の被害者と遺族は国を相手に訴訟を起こすべきである
2023年2月5日
昨年10月以降、全国各地で頻発している20件以上の連続強盗事件の首謀者として、ルフィと名乗る渡辺という男が浮上している。
フィリピンの入管施設に収容されているはずの男がスマホで日本の実行犯らに事を指示していたという。ネットではこの首謀者と一連の実行犯らを死刑にしろとの声が日増しに高まっている。
だが、後述するように、渡辺ら並びに実行犯らが死刑になる可能性はかなり低い。
日本の捜査当局はフィリピンに対し、渡辺ら幹部4人の身柄を日本に引き渡すように要求しているので、近い将来彼ら全員が日本の司法で裁かれることになる。
渡辺らは日本に帰りたくないだろう。フィリピンには死刑制度はあっても、国連の勧告を受けて現在は死刑の執行が廃止されており、
しかも、ゆるいムショ生活で、状況によっては刑務官に賄賂を供与して脱走し、自由の身になることも十分可能だからである。
ところが、日本は違う。法務大臣が朝起きて「ただはんこを押すだけ」の確立した死刑制度の下、2000年以降、98人に刑が執行されている。
岸田政権では2人の執行が確認されている。
脱走についても、賄賂の逃亡は前例がないので、強行突破の方法しかないだろう。カルロスゴーンのような成功例もあるが、一般論としてフィリピンよりは難しいと思われる。
検察が渡辺を死刑に求刑することはないと思われるが、以下、少し死刑制度について私の態度を改めて述べておきたい。
2月3日、国連の人権理事会は日本に対し、死刑制度の廃止や政府から独立した国際基準の人権救済機関の設置などを勧告した。
死刑制度の是非については、本ブログでこれまで何度も触れてきたように、私は反対の立場をとっている。
首をロープでくくられて数分間苦しめた挙句、脱糞し、目玉が飛び出し、血しぶきを上げながら首から胴体が落ちていくことを容認する制度を「残虐ではない」と感じる70パーセント超の国民の感性に私はついていけない。
死刑賛成者から「反対では被害者の遺族が報われない、被害者の遺族の感情は考えないのか」と反論されることがあるが、
その意見には2点反論できる。1つは、そもそも被害者に遺族がいなかった場合は、どう考えたらいいのかということ。
遺族がいる場合といない場合とで場当たり的に対応を変えていくというのは、法的に構築されたはずの制度を運営していく上で、あってはならないことである。
もう1つは、たとえ被害者に遺族がいたとしても、その遺族が死刑を望まなかったらどうするのか、という問題がある。
ジャーナリストの大谷昭宏は,長い取材経験でもそのような遺族に会ったことはないと喝破していたことがあったが、それは彼の取材範囲が甘いだけで現実にはいる。
宗教上もしくは思想信条から反対している遺族がいるのを私は個人的に知っている。ただ、日本特有の同調圧力で本音を口外しないだけである。
私のような第三者ではなく、当事者が国の確固たる制度に公然と反旗を翻すというのは、死刑を求めるよりも勇気が要ることである。
国の制度に公然と反対する者は国家反逆罪とみなされ、逆に死刑になる国も外国には存在する。
死刑にするかしないかを被害者遺族が感情的に決めていくという国の制度の在り方に違和感を覚えないと言うのならそれ以上何も言うことはない。
ところで、私はただ反対しているだけではない。犯罪者が罪を償う対案として、たとえばだが、
尖閣や馬毛島あたりに収容所を作って、文字通り彼らを島流しにしてそこで強制労働をさせるというのはどうかとも考えている。
その方が死刑台に送るよりも国や国民の利益になるはずである。
彼らの作業で上がった利益のほとんどを少子化対策や年金の財源にあてるのもいいだろう
南條範夫の「戦国残酷物語」によると、江戸時代には、重労働で建物を建築させた直後に、その建物をすぐに壊すように命じ、
また同じ建物を建てさせるという非生産的な苦役を課していた藩もあったようだが、現在は憲法18条に正面から反するので認められない。
病弱の者、仮病を使って働かない者らは、島の病院に入ってもらうことになる。
病弱の者は仕方がないが、仮病の者が病院に閉じ込められて、毎日何もしないでいるというのは、ある意味苦痛だろう。働いている方がマシだと考える者の方が割合的に多くなるのではないだろうか。
ルフィの指示の下で行われたとされる一連の特殊詐欺、強盗事件の実行犯は10~30代がほとんどでなので、体力はあり余っているはずである。
彼らを酷使して我々の税金負担を軽くしてもらう方が死刑台に送るよりも、生産的ではないだろうか。
ただ、ここまで書いておいてどうかとも思うが、渡辺ら全員は、島流しにされて強制労働させられることもなければ、死刑になる可能性も低いと言わざるを得ない。
渡辺ら4人の幹部らには詐欺、強殺の共謀共同正犯、もしくは教唆犯が成立し、無期懲役が求刑されるものと思われる。
狛江の強殺事件の評価次第では,検察が渡辺にだけ死刑を求刑する可能性もなくはないが、本ブログはそれもない、と断言しておく。
だが、そうなると20件以上の強盗事件の被害者と、2300人、総額35億円の特殊詐欺事件の被害者が救われない。
そこで以下、ここでは特殊詐欺事件は置くとして、強盗及び強殺事件の国家賠償請求訴訟での救済を考えたい。
被告は警察庁長官と捜査本部のトップである。私は国家賠償請求の要件は十分満たしていると考えている。
2017年からフィリピンに滞在している渡辺は、日本国内にいるタナカなる女に、特殊詐欺グループが稼いだ現金を運ばせていたという。
捜査本部は特殊詐欺グループの実行犯を次々と摘発していったが、組織の全容解明までには当時至らなかった。
ところが、2019年11月、運び屋のタナカが窃盗容疑で逮捕されたことで、事態が急変する。彼女が口を割ったことで、組織の全容解明につながっていったとされる。
本件の一連のポイントはここである。捜査当局は、フィリピンにいる渡辺らが首謀者であることをこの時点で突き止めたということである。
捜査本部の連絡を受けたフィリピン当局は、2019年11月、フィリピンに潜伏中の特殊詐欺の実行犯ら36人を身柄拘束し、その後幹部らも順次拘束して収容施設に送った。
この時点で日本の捜査本部も具体的に次の手を打つべきだった。にもかかわらず、彼らはノホホンとして行動を起こさなかった。
フィリピンの収容所の実態について、週刊文春2月9日号は、「施設で一定期間を過ごした日本人男性」の話として次のように紹介している。
「(施設の)職員はボーイみたいなもの。カネを渡すと買出しに行ってくれるし、金額によってはエアコン完備の個室にも入れる」
「収容されている女とセックスもできる。プリペイド式のスマホも所持できる。カネ次第で”自由な外出”以外は何でもできた」
と。
このような施設から渡辺らが日本の実行犯に指示を出し、次なる行動を起こすことは分かりきっていたことではなかったのか。
事実、昨年末から特殊詐欺から強盗の指示にスイッチした渡辺は、スマホ一つで日本の実行犯に強盗を次々と指示。だが、それでも捜査本部の動きは鈍かった。
本気で動いたのは、今年1月に起こった東京狛江の強盗殺人事件だった。これでは、人が死ぬまで本気の捜査はする気がなかったといわれても仕方がないだろう。
それまでに、およそ20件以上の強盗事件に渡辺が関与している事実が疑われていたにもかかわらず、である。
捜査本部の対応が怠慢だったことに疑いの余地はない。必要があれば直ちに捜査官をフィリピンに送ることもできたはずである。
捜査の段取りが適正であったなら、狛江の90歳の強盗殺人は防ぐことができた。
被害女性の遺族及び強盗の被害にあった方々は、堂々と捜査本部とその上の警察庁の監督責任を国賠請求の形で追及すべきである。
訴えの内容は、概ね以下のような流れになるだろう。捜査当局をまとめてとりあえず「国」としておく。
「国は2019年11月の時点で、フィリピンを拠点とした犯罪グループによる特殊詐欺事件の被害者が相当数に上がっていたことを認識しており、」
「その後も被害者が出ることについて、高度の蓋然性を以って認識しうる状況にあった。」
「そうであれば、その後の被害防止に必要な措置を直ちに執るべき状況にあったものといわなければならない」
「その時点で必要な措置が執られていれば、特殊詐欺の被害のみならず、強盗の被害拡大を防ぐことができた。にもかかわらず、そのような措置を執ることを怠った。故に被害が拡大する結果となったことは明らかである」
「一連の状況を総合すると、2019年11月以降、犯罪拡大発生に必要な措置を十分に執らなかったことは著しく合理性を欠くものとして、国賠法1条1項所定の適用上違法というべきである」と。
折しも、2月3日、岸田首相はフィリピンに年間2000億円を超える支援を表明する方向で調整に入った。
裁判が面倒であれば、岸田にその2000億円の一部を回せと要求するのもよいかもしれない。
スポンサーサイト