デビィ夫人とやらに国際情勢の何がわかるというのか
2023年1月30日
ロシアによる本格的なウクライナ侵攻から約1年が経とうとしているが、この戦争の化けの皮はすでに剥がれている。
2014年以降、米国の傀儡国家となったウクライナは、ミンスク合意を反故にして東部住民の弾圧を繰り返していただけでなく、NATOの東方拡大を画策するなど、反ロシアの態度を露わにしていた。
ロシアの軍事侵攻4か月前の2021年10月には、東部地域に国際法違反のドローン攻撃まで行っていた。
それでも昨年2月の侵攻当時、本ブログは、たとえウクライナに非の原因があったとしても、挑発に乗って大掛かりな軍事侵攻を仕掛けたプーチンの非の方が大きいとの見解を示した。
だが、この見立ては、前提事実を見誤ったものだったと今は認めざるを得ない。
ゼレンスキーのドローン攻撃予告に、当時欧米諸国は懸念を表明していた。プーチンも「紛争がエスカレートしていくだけだ」と警告を発していた。にもかかわらず攻撃は行われた。
ただ、侵攻前のウクライナの攻撃がこのドローン攻撃だけなら、私は今も考えを変えていないかもしれない。何があっても大規模侵攻はやはり避けるべきではなかったか、と。
だが、ドローンの件とは別に、侵攻前から東部では2014年以来最大規模の大戦争がすでに始まっていたとなれば話は別である。
ロシアが軍事侵攻したのは2022年2月24日とされているが、実はその8日前の16日から、東部のドンパスでは大規模戦争が始まっていたようである。
根拠は、OSCE(欧州安保理機構)監視団(侵攻後2か月後に活動終了)の日報である。
国連平和維持活動の政策責任者を務めていたジャック・ボー氏がフランス情報研究センターの『文献速報』第27号に寄稿した論文で、その内容を明らかにしている。
OSCEは、日本の外務省も2014年以後、公式に財政的・人的貢献をしていた安保理の組織であり、素性の知れないいかがわしい団体ではない。
日報によると、東部ドネツク・ルガンスク地域における1日平均の停戦違反行為・砲撃数は、2021年はそれぞれ257回、約70発足らずだった。
記録にはないが、2014年~2020年の年平均もおそらくこの程度だったのではと各々の年の報道などから推察することができる。
ところが、記録によると、2022年に入るや、2月14日までの45日間だけでおよそ200回、約60発と増えていった。
2月15日になると、1日だけで153回・76発で、問題の16日には、591回、316発である。
その後さらに戦闘は激化していったようで、21日は1927回で1481発、22日は1710回で1420発である。
令和の日本で1日に1400発の砲弾が飛び交う光景を想像できるだろうか。これを戦争状態と言わないというのなら、それも一つの解釈なので何も言うことはない。
その間、ウクライナ兵が東部の民間人をレイプ、虐殺する蛮行を働いていた事実も確認されている。
問題はこの激しい状況を、ウクライナ、ロシアのどちらが先に作ったかだが、日報にはこの点の記載がない。調べがつかなかったのだろう。
当時、東部地域で戦闘中のウクライナ軍の人数は推定12万人、東部の新ロシア武装勢力は4万~4・5万人と圧倒的に少ないとされるが、これも事実だろう
日本のメディアは、当時、国境付近にロシア軍が15万人程度配備されていることを西側メディアの情報を引用する形で盛んに伝えていたが、
当時のこの報道が事実だとすれば、正規のロシア軍を東部に全面投入して援護する余裕はなかったと考えられるからである。
敵の兵数の半分にも満たないのに、相手に生きるか死ぬかのけんかを売るだろうか。追い込まれたのならともかく、戦争当初からそこまで無謀な戦術をとる必要性は乏しい。
そうであれば、ドローン攻撃がそうだったように、先にウクライナが総攻撃を仕掛けてきたと考えるのが筋である。
ウクライナの圧倒的な兵数から見ても、一気に東部問題に片をつけに入ったとみなすこともできよう。
ロシアにとって、東部を完全に支配されることは、死活問題であり、あってはならないことである。プーチンのあせりは相当なものだったに違いない。
国境付近に待機していたロシア軍は、状況を打開すべく、宣戦布告を行った上で、2月24日、首都キーウを目指して侵攻を開始した。
西側は、ロシアの軍事行動を国際法違反にするために、2月16日にウクライナが始めた事実を意図的に隠した。
その間の西側の対応だが、その後の戦況が示すように、クレムリンの動きは西側、特に英米に筒抜けになっていたようで、彼らが得た情報は瞬時にウクライナに伝わっていった。
ロシアの侵攻の情報を事前にキャッチしていたゼレンスキーは、いち早く安全な場所に身を移し、以後テレビカメラの前でロシアへの非難を繰り返すようになる。
ゼレンスキーはプーチンと違って演説が巧みなので、事情を知らない者たちが皆彼にだまされてしまうのは仕方がない。
森元首相と鈴木宗男議員の「ロシア寄り」ともとれる発言が批判されているが、彼らは別に「ロシアが善でウクライナが悪」だとまで言い切っているわけではない。
森の「報道がウクライナ寄りなのは不公平である」との意見には同意できる。宗男が言う「今大事なのは、どっちが悪い云々ではなく、一刻も早い停戦である。」との意見にも反対する理由はない。
デヴィ夫人なるタレントがツイッターで森と宗男を酷評しているが、賛同に値しない。
ツィートの内容は次の通り。「森元首相と鈴木宗男は老害以外の何者でもない。プーチンと写真を撮ったから”トモダチの国”を非難するな、自分が日露の外交を拓いたから、と馬鹿を言う。」
「ロシアの公船が津軽海峡付近の太平洋に出没している非常時に、世界情勢を知らない者達が巣食うから日本は遅れを取るのだ。」と。
これはちょっとひどすぎないだろうか。
まず、「老害以外の何者でもない。」はただの悪態、誹謗中傷である。書き出しから言葉の選択がすでに最悪である。
その上で「プーチンと写真を撮ったから”トモダチの国”を非難するな、自分が日露の外交を拓いたから、と馬鹿を言う。」と言っているが、森も宗男もそのような「馬鹿」は一言も言っていない。
続いて「「ロシアの公船が津軽海峡付近の太平洋に出没している非常時に」と言うが、
海峡の中央部分は公海とされており、国際法上は外国艦艇でも自由に通過できるので問題はないはずである。
「世界情勢を知らない者達」とも非難しているが、ウクライナの首都キーウに1週間程度いただけで、世界情勢の何がわかるというのだろうか。不合理極まりない見識という他ない。
そもそもこのご夫人がこれまで世界情勢なるものについての御大層な知見を開陳したことがあっただろうか。私は寡聞にして知らない。
ブログも拝読したが、セレブな生活を見せつけるかのような華美な写真をこれでもかと載せているだけである。世界情勢について言及した記述など全くみつけることができないのは言うまでもない。
繰り返し「そもそも論」になるが、人の意見や行動を批判したいのなら、具体的な事実を指摘した上でなければ、ただの悪態、罵詈雑言にすぎなくなることを知るべきである。
森、宗男の発言のどこが間違っているのか。どこが無知なのか。
事実無根の架空発言をでっちあげて批判するのではなく、発言内容をもう少し掘り下げて具体的に悪態をついてほしい。
批判は常に建設的なものでなければならない。
そうでなければ、筑紫哲也が言っていたように、それはただの「便所の落書き」でしかなくなってしまうのである。
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