自分が少数派であることを自覚して多数派国民の考えに異議を唱え続けていく
2023年1月1日
マクロ経済学では、主に実質GDP増加率で国の経済成長を測るのが基本であり、過去最高を更新中の企業の内部留保や上場企業の株価上昇は目安ではない。
日本ではアベノミクスが始まった2年後の2018年終わりごろから経済は不安定になり、経済成長率は1パーセント未満となった。
その翌年はついにマイナス成長を記録した。
2020年はさらに4パーセントのマイナスで、IMF(国際通貨基金)によると、日本の経済成長率は世界157位だった(21年はプラス1,6パーセント)。
今の日本はアジアの中でもカンボジア、ラオス以下の経済成長率である。このような我が国の状況を20世紀後半の時代に誰が予想しただろうか。
労働者の実質賃金も上がっていない。移民政策でも採らない限り、労働力人口の将来的な増加も考えられず、今や日本は貧民国のカテゴリーに突入しつつある。
国民の大多数が経済的に余裕のない生活を送っているのに、それを諭すべき立場にいるはずの野党第1党は消費税増税を容認し、
その野党をなめきっている岸田政権は、国会の議論をすっ飛ばして国民に増税と負担額をあちこちに課そうとしている。
しかも増税の目的の一つが防衛費への充当だというのだから正気の沙汰ではない。
12月31日付の週刊FLASHサイトが「防衛費43兆円の次は「外国に軍事費を支援します」林外相が予算20億円を明言」との驚愕のタイトルで記事をアップしている。
令和5年度の外務省の予算案には、外国に軍事費20億円を資金提供する方針が記述されているという。
この点を問われた林外相は、27日の記者会見で否定しなかった、と。何と言うことだろうか。
日本は今とんでもない状況になっている(と思っている私は少数派か)。原発の新増設、再稼働も国民的議論のないまま、政管の密室でなし崩しで決められた。
だが、原発に関して言えば、日本国民の本音は「推進容認」に向かっている。
昨年2022年5月の新潟県知事選では、原発推進の急先鋒である花角英世(自民支持)が70万3600票超を獲得。反原発の野党候補の20万2800票を圧倒した。
新潟だけではない。私の出身地の青森県には、六ヶ所村の原子燃料サイクル施設やMOX工場、東通村原発、大間町原発、むつ市の使用済燃料中間貯蔵施設等、原子力関連施設が多いことからもわかる通り
議会は推進派が数で圧倒している。だが、反対派が幅を利かせていた時代もあった。東日本大震災当時である。
だが、今は完全に力を失った。県民が当時の事故を時の経過で忘れているのである。
全国的に見ても、国民の本音は原発推進ないし容認の方向に向かっているものと思われる。
岸田政権は、血税約2兆5000億円を電力会社に投入している。原発稼動に向けて準備をもっと急げということか。
地元の柏崎市は原発再稼動にやる気満々である。
12月30日付新潟日報デジタル版によると、市議や村議らで作った「30キロ圏まで拡大を目指す議員の会」が柏崎刈羽原発の再稼働を「了解」したという。
受け入れる自治体がこの調子なので、遅くとも今年の7,8月ごろには稼動するのではないか。原発の是非がもはや国民的議論でなくなったというのは残念なことである。
この空気では、不可能と思われていた新増設も自公政権にとって夢ではなくなってきた。
新増設には、初期費用だけで最低1兆円かかると言われているが、これは税金ではなく電気料金の上乗せという形で、国民が負担することになると思われる。
話を防衛費増に戻すが、
各メディアの世論調査で、いわゆる「敵基地攻撃」保有に賛成が過半数を超えているのを知るや絶望的になった。
孫崎享氏が防衛大学校の教授生活7年間の総決算として執筆した「日米同盟の正体」(2009年刊)に、このような記述がある。
「資源国として生きるロシアは、国際社会の報復を無視できる。」
「ロシアはサダムフセインが国際社会の報復に対してさしたる考慮をせずにクウェートを攻めたのと同じ思考をとりうる。」と。
昨年まさにそのとおりのことが起こった。10年以上前の孫崎氏の予言は当たり、ロシアはウクライナに軍事侵攻した。孫崎氏の慧眼には恐れ入る。
この優れた書物の中で孫崎氏は、敵基地攻撃論の是非について、次のように述べている。
「敵基地攻撃は基本的に先制攻撃である。先制攻撃された国は、残りの総力をあげて反撃する。」
「したがって、攻撃する国は先制攻撃によって相手国の9割程度の攻撃能力を破壊することが必要となる。しかし、それは実現不可能である(中略)」
「先制攻撃をした後の展開について、まったく能力を持たない国が先制攻撃能力だけを持とうとするのは極めて危険である。」と。
この最後の一節は重要である。孫崎氏は「21世紀の戦争と平和」(2016年刊)で、この箇所を次のように「補足」説明している。
「今日の日本国内での戦略思考の最大の弱点は、「私はこうしたい」「私はこうする」で終わっていることです。」
「自国が何か行動をとれば、相手国は必ずそれに反応します。必要なのは、相手国の行動論理を読み、自国と相手国の数手先を予測することですが、そのような議論がないのです。」と。
その通りだが、「数手先」を予測しなくても、敵基地攻撃がナンセンスな考えであることは現状を考えればわかることではある。
この点について、孫崎氏は日刊ゲンダイで連載中の論文(12月23日付)でも、次のように述べている。
「「敵基地攻撃」や「反撃」が仮に成功しても、それが終わりではない。そこから新たな戦いが起こるのだ。」
「中国は今や2000発以上のミサイルで日本を攻撃できる。北朝鮮も300発以上のミサイルで日本を攻撃できる。さらに両国ともに核兵器を保有している。」
「日本が中国や北朝鮮に「敵基地攻撃」や「反撃」すれば、中国や北朝鮮の軍備を一掃できるとでも思っているのであろうか。彼らが怯えて「ごめんなさい」とでも言うと思っているのか。」
「「殴り返したい」。そんな単純極まりない感情論で日本の国は守れない。」と。(引用ここまで)
敵基地攻撃能力保有に賛成しながら、防衛費増(増税)に反対するとはどういうことなのか。思考が分裂している。
原発容認も然り。東日本大震災級の揺れに耐震性がない原発の再稼働を容認しようというのか。
敵のミサイルが2000発どころか、一発でも原発に着弾して破損するようなことがあれば、日本列島の最低3分の1は消失する(東日本大震災がそれを証明した)。
それを承知で原発を容認し、敵基地攻撃に賛成するとでもいうのか。
今年は本ブログが少数派であることをより自覚しながら、岸田政権にだけでなく、多数派国民にも異論を多く申し上げていきたい。
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