何度でも言う。岸田が安倍のかいらいであることを忘れてはならない
2021年11月14日
最近読んだ2冊の本は時間の無駄だった。読んでしまったことを強く後悔している。
1冊は,乾正人著「影の首相 官房長官の閻魔帳 政権を左右する権力の光と闇」。著者に言わせれば,歴代の官房長官で最低最悪は河野洋平とのことだが,この本の真意はそこではない。
読む前に,著者が産経新聞記者だということを明瞭に認識すべきであった。著者の真意が「安倍晋三を手放しで礼賛し,枝野幸男を貶める」点にあるのだと。
衆院選後に出た本なので特別な意図はなかったと思われるが,長年の政治ウォッチャーにはわかりきった内容で,タイトルが言うほど暴露本的な要素もなく,そこを期待して読んでも失望する。
あと1冊は,河野太郎の息子の太郎著「日本を前に進める」。3分の1ぐらいがただの個人的な思い出話,残りは抽象的な政策を語っているだけのスカスカ本である。
誰がゴーストなのか知らないが,政策の箇所は官僚の作文のように平板かつ抑揚がなく,かなり退屈である。何よりも肝のはずの脱原発の話を封印している。
要するに,政治家としての強固な信念や理念,気概を著書から全く読み取ることができない人畜無害の駄本である。
総理大臣になる野心はまだ捨てていないようだが,そうであれば,ごまかしの政策云々を語る前に,まずは上から目線で短気な性格を改めることから始めるべきだと言いたくなる。
その河野を総裁選で破り,衆院選でも絶対安定多数を維持した岸田政権だが,今後の期待値については,賢明な識者の間でも観測が分かれている。
総裁選後の党人事で,岸田は甘利明を幹事長に登用したが,これが選挙後に甘利を失脚させるための策略であったと推察する有能な某識者がいる。
どういうことかというと,UR問題がくすぶっている甘利を幹事長にすれば,世論の非難が殺到するのは当然予測できることだが,岸田はそれを承知で甘利をポストにつけたというのである。
選挙区で落選した甘利には,安倍ら周囲を納得させる形で,必然的にその後の人事で冷や飯を食わせることができる。それは岸田の思惑だったというのである。
岸田にとって,甘利は邪魔な存在だが,麻生,親分の安倍とともに3Aと言われる男をハナからぞんざいには扱えない。だから,今回の選挙を利用して甘利を貶めたと。
この推論の前提は,自民党や報道機関による選挙の情勢調査(理由は省くが,彼らは世論調査とは言っていない)の的確性である。
米国では第三者機関が情勢調査を行っており,日本ではテレビ,新聞を中心としたマスメディア自身が行っているが,この点の問題点は脇に置くとして,
改めて今回の選挙の情勢調査を確認してみると,ほぼほぼ自民党の情勢調査,大メディアの報道通りの結果になっているのがわかる。
情勢で劣勢が伝えられていた甘利が街頭演説で狼狽ぶりをさらけだしたのは,情勢調査の的確性を肌で感じ取っていたからだろう。
だが,甘利更迭謀略説はしょせん結果論にすぎないと考えるべきである。甘利は2016年,千葉県の建設会社から,URへの口利き依頼料として2度現金を受け取った。
1度目は大臣室,2度目は神奈川の地元事務所で,各々50万ずつの計100万円である。
このうち特捜部が不起訴相当を下したのは,1度目の大臣室での収賄であり,2度目については実はまだ告訴すらされていない。
情報筋によると,建設業者は2度目の件で詐欺罪の告訴を準備しているとのことである。甘利は現金を受け取っただけで何も働きかけをしなかったというのが詐欺に当たると。
この告訴状を建設会社がもし選挙前に提出していたら,選挙後の甘利失脚云々どころではなくなっただろう。政権全体に打撃が加えられ,情勢調査にも大きな影響を及ぼしたであろうことは間違いない。
だが,選挙前の告訴状提出を官邸サイドが押さえ込んでいたとすれば話は別で,謀略説は陰謀論とは言い切れなくなる。
ごちゃごちゃと何が言いたいかというと,選挙前の党,閣僚人事は「甘利人事」と陰口を叩かれたが,岸田が忠誠心を持って接しているのは安倍だということである。
一部識者やメディアが,岸田が安倍かいらいからの脱却を図っているとの観測を示しているが,だまされている。
岸田が林芳正に擦り寄ることで安倍から離れていく可能性は十分あるが,それはもう少し先のことである。岸田が総理任期中に忠誠心を誓うのは親分の安倍しかいない。
そうとなれば,今後4年間,暗黒の安倍政治が続いていくことを我々は肝に銘じておく必要があるだろう。
財務省の言いなりの岸田は,18歳以下の一律10万円現金給付すら決められない。
森友問題で親分の安倍は財務省に借りがある。だから,子分の岸田も財務省に強く出ることができないのである。親分を傷つけてはいけないと。
岸田が森友,さくら,河井事件等々の安倍案件の再調査を未だにかたくなに拒んでいるのは,安倍本人の直接の指令によるものであることに異論を挟む者はいないはずである。
岸田の看板政策(デジタル構想)を議論する中心会議のメンバーに,何と竹中平蔵が選ばれている。ネットでは早くから「どこが新自由主義の転換なのか」と批判が渦巻いていたが,全くその通りであろう。
ちょっと考えればわかることだが,財務省と安倍に依存している男が,安倍政治からの弱肉強食経済路線の脱却などできるわけがないのである。
ちなみに,この竹中人事がテレビなど大メディアで問題になることはないのは言うまでもない。
11月13日,北朝鮮拉致被害者の帰国を求める集会が都内で開かれた。それに出席した岸田は何と言ったか。
「私の手で必ず拉致問題を解決しなければならない」である。
どこかで聞いたような空疎なフレーズではないか。
政策だけでなくパフォーマンスまで親分安倍を模倣するこの男、この政権への支持率が高いことに笑ってばかりいられないことだけは確かである。